宇宙と地上のためのクローズドループ農業への投資

2035年までに、低電力・自律運転の水耕モジュール+運用SaaSで、 宇宙と地上の食料・資源の安定供給を実現します。

投資の考え方

  • 問題の定義: 連年の高温・極端気象と水ストレス、エネルギー/物流の高コスト化により、天候依存の露地/一般施設栽培は「収量・品質・コスト・安全」の再現性が揺らいでいます。宇宙環境はさらに厳しく、閉鎖循環・低電力・自律運用が必須です。
  • 解決アプローチ: 低電力設計 × 自律制御 × 運用SaaSで、**小型・閉鎖循環モジュール**を地上で実証 → 規制/衛生要件を満たす「シングルベイMVP」を確立 → 医療/防災/孤立環境から段階的に展開します。
  • 収益モデル: ハード最小構成+保守契約に、**運用SaaS(月額)**を組み合わせたARRモデル。作物販売に依存せず、稼働率と運用データで価値を可視化します。
  • 体制と前提: 現在は代表1名のため、小スコープ・短サイクルでのマイルストーン分割と、パートナー活用(部材/COTS・試験設備・データ解析)で前進します。

なぜ今、既存の土壌農業はリスクに晒されているのか

記録的な高温・極端気象、水資源の逼迫、エネルギーと物流コストの上昇などが同時多発的に進行し、 従来の“露地×気象順応”モデルでは安定供給を維持しづらい環境になっています。ここでは、 直近のリスク要因時間軸ごとの影響像を簡潔に整理します。

直近の主要リスク

  • 異常高温・極端気象の常態化:連年の高温更新、線状降水帯による豪雨・洪水で開花不稔・品質劣化・作業停滞・表土流亡が増加。病害虫の越冬・北上で防除負担も拡大。
  • 水資源の逼迫と競合:渇水・取水制限に加え、都市・工業・データ需要との競合で用水確保・コストの不確実性が上昇。
  • エネルギー・冷却・保全コストの増大:予冷・貯蔵・コールドチェーンや施設冷房の電力費上振れが収益を圧迫。
  • 物流の不安定化:高温や豪雨による道路規制・遅延で出荷計画・鮮度維持に影響。燃料費も含め総コストが上昇。
  • 土地・水源へのアクセス不安:他用途転用・買収・賃料上昇で農地・水源の確保が難化(地域差あり)。
  • 政策・金融・保険リスク:環境・水・排出関連の規制強化、補助要件の高度化、保険料の上昇・引受条件厳格化で小規模経営ほど負担増。
  • 投入資材・技術への依存:種子・肥料・資材・データサービスの調達難/価格高騰で原価が不安定化。適応投資の初期負担も大きい。
  • 労働安全と人員確保:熱中症リスク増で作業時間帯の制約・夜間化、人件費・管理負担が上振れ。

時間軸で見る影響像

  • 短期(~数年):作柄の振れ幅拡大、用水・電力・輸送の突発的コスト増、労務負担増。
  • 中期(~10年):病害虫・雑草相のシフト定着、用水・エネルギーの恒常的な高コスト化、保険条件の厳格化、土地・水アクセスの格差。
  • 長期(10年以上):沿岸塩害・地力低下・適地の地理的シフトにより、生産基盤の再配置と経営の二極化が進行。

補足

気象や水の構造的な不確実性が高まるほど、従来型の“天候依存”から 環境制御・水循環・リスク分散への移行が重要。サプライ側の 安定性・再現性・効率向上は、サプライチェーン全体の持続可能性へ波及します。

進捗とマイルストーン

  • アーキテクチャ案・主要BOM初版(照明/ポンプ/センサ/制御)
  • 電力収支の概算モデルと熱設計の前提条件を確定
  • 運用SaaS基盤の雛形(遠隔モニタ/アラート)を試作
  • 医療/防災領域でのニーズヒアリングとPoC候補先リスト化(LOI打診準備)

実行ロードマップ(24か月)

  1. Phase 0:設計固定・パートナー確保(0–3か月)
    主要要件確定(低電力/衛生/冗長/遠隔運用)/BOM確定(極力COTS採用)/ 小規模ラック+電力計・温湿度・EC/pHの計測系を準備/ 連携候補(大学/病院/自治体/防災)とPoC覚書の素案作成
  2. Phase 1:卓上プロトタイプ(3–9か月)
    20–40L級の閉鎖循環ミニループを製作/ LED・ポンプ・制御の電力ベンチ/ 2–3作期の小規模栽培実験(葉物)/ SaaSに遠隔監視・しきい値アラート実装/ 目標:平均消費電力<80W、循環率>95%
  3. Phase 2:短期実証(9–15か月)
    パートナー設備内で4–6週間の連続運転/ SOP(洗浄・補給・障害時手順)と安全チェックリスト整備/ LCAベースライン取得/ 目標:稼働率>98%、葉物エネルギー効率 8–12 kWh/kg
  4. Phase 3:有償パイロット(15–24か月)
    「シングルベイMVP(~0.5㎡級)」を設置・遠隔運用/ 最低1拠点で有償評価(病院/防災拠点など)/ SLA試案(稼働率、MTTR)と月額SaaSの算定式を提示/ 目標:エネルギー効率 6–10 kWh/kg、MTTR<24h、衛生指標クリア

※ 宇宙向け実証(ISS/Gateway)は「次段」。24か月内は地上での再現性・衛生・低電力の立証と 運用SaaSの有償化に集中します。

主要指標と目標(24か月の到達ライン)

  • エネルギー効率: 葉物 6–10 kWh/kg(MVP時)
  • 稼働率/SLA: 稼働率>98%、MTTR<24h
  • 水循環率: >95%、廃液管理SOPを文書化
  • 衛生・洗浄性: ATP/微生物指標のしきい値合格、洗浄時間の標準化
  • SaaS: 監視・アラート・運転最適化(基本機能)提供、月額の算定式提示
  • 事業面: 有償パイロット≧1拠点、次段導入のLOI/覚書≧2件

資金用途とリソース(リーン計画)

  • 部材/COTS・治具: LED・ポンプ・計測、筐体・洗浄性治具(最小構成)
  • 試験費: 電力・環境・衛生の外部測定、短期実証の設置/撤去費
  • ソフト: 遠隔監視・アラート・ログ解析の最小実装(クラウド利用)
  • 諸費用: 保険/運搬/認証事前調査・ドキュメント整備

想定ラウンド(プレシード目安):1,500–3,000万円
使途は上記に限定し、人件費は極小(代表1人月)。必要に応じて 6–12か月後に契約人材(電気/機械 各0.2–0.5人月)をスポット投入します。

リスクと対応策

  • 電力コスト/効率: 低電力BOMの固定、動的制御(点灯/給液/空調)でピーク抑制。PPA/DR/蓄電をPoC先で併用。
  • 衛生・汚染: 密閉・洗浄性設計、SOP/監査、部材標準化。実証でATP/微生物指標を公開。
  • スケジュール: 1人月前提のためスコープ凍結・段階納品・外部委託で遅延リスクを分散。
  • 調達: COTS優先・代替BOMを事前定義。長納期品は早期発注。
  • 事業性: まず有償評価の獲得とARR化(SaaS)を先行。単体採算・SLAで価値を定量。

チームと提携

現在:代表1名。当面はリーン開発で検証を進めます。
募集: 実証フィールド(病院/防災/研究)、衛生・電源・熱の専門顧問、 契約ベースの電気/機械エンジニア。データ解析・LCA評価の協力も歓迎します。

お問い合わせ

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※ 本ページのスケジュール・数値目標・ロードマップは将来予測を含み、変更される可能性があります。