「自分で使い、自分で改善する」── Optiens の社内CRM運用知見の公開


「自分で使い、自分で改善する」── Optiens の社内CRM運用知見の公開

なぜ「自分で使い、自分で改善する」を信条にしたか

中小企業向けにAI導入支援・業務システム提案をしていると、お客様から最初によく聞かれる質問があります。

「それ、御社では使っているんですか?」

当然の問いです。SaaSベンダーの営業が、自社では別のCRMを使っている。コンサルが提案するワークフローを、自分の会社では一切回していない——そんな話は珍しくありません。提案する側が日常的に使っていない仕組みは、現場の細かい摩擦に気づきません。気づかないものは改善できません。

Optiensは、この点について明確な方針を立てています。

お客様に提案するすべての仕組みを、まず自社で使い、自社で改善する。

CRMも、AI要約も、経営ブリーフィングも、書類自動読み取りも、すべてOptiensの社内業務で毎日動いています。本記事では、そのうちの中核である「社内CRM」の運用知見を、率直に公開します。


Optiens社内CRMの全体像

社内CRMは、以下の構成で動いています。

┌─────────────────────────────────────────┐
│ 業務UI: Astro製の専用画面(PC・スマホ) │
├─────────────────────────────────────────┤
│ AIエージェント: Claude / GPT による      │
│   要約・分類・経営ブリーフィング生成      │
├─────────────────────────────────────────┤
│ クラウドDB: Supabase(PostgreSQL)       │
└─────────────────────────────────────────┘

これは 前回の記事で技術的に解説した「クラウドDB + AIエージェント」構成そのものです。Optiensは自社CRMをこの構成の実証ショーケースとして運用しています。

機能としては、汎用CRM(Salesforce、HubSpot等)の主要機能のほとんどをカバーしています。

機能内容
リード管理問い合わせフォーム・名刺・紹介経由のリードを一元管理
ステータス管理初回接触〜診断〜提案〜成約〜保守の進捗を可視化
商談メモ打ち合わせ内容を音声→テキスト化、AIが要点を抽出
AI要約各案件の経緯を1段落に圧縮し、再開時の認知負荷を下げる
経営ブリーフィング朝、優先案件・要対応・滞留中をAIがまとめて通知
添付資料の自動読み取り業務資料・見積書・議事録から情報抽出してDB登録

すべてOptiensが自社で構築・運用しています。月額ライセンス料はゼロ円です。発生しているのはSupabaseの実費(数千円/月)と、AI APIの従量課金のみです。


一日の運用フロー(具体)

抽象論では伝わらないので、Optiensの一日の動きを書いておきます。

朝(8:00〜8:15)

PC・スマホどちらからでも、CRMトップ画面を開くと経営ブリーフィングが表示されます。

  • 今日の優先案件3件(理由つき)
  • 24時間以内に動きがあったリード
  • 7日以上動きがない滞留案件
  • 直近の問い合わせフォーム入力内容(AI要約済み)

これは、Supabaseに蓄積された前日までのCRMデータをAIエージェントが読み取り、毎朝6:00に自動生成しています。経営者が情報を探しに行くのではなく、情報のほうから整理されて届く設計です。

日中(商談・提案作業中)

商談前にCRMで該当案件を開くと、過去のやりとりがAI要約された1段落で頭出しされます。長いメールスレッドや議事録を全部読み返す必要はありません。

商談後はメモを箇条書きでCRMに貼るだけで、AIが構造化・要約・次アクション抽出までを行います。手で清書する作業は発生しません。

夕方(17:00〜17:30)

  • ステータスの変更があった案件をCRMで一覧化
  • 翌日のフォロー予定をGoogleカレンダーに自動連携
  • 週次集計用のデータをSupabaseに蓄積

ここまでが、毎日のルーチンです。1日あたりCRMに触れる時間は、合計で30分程度です。これは汎用SaaSを「業務に合わせて使い倒す」スタイルでは、まず実現できない時間圧縮です。


なぜAstro + Supabaseで自前構築するのか

「市販のCRMを買ってくればいいじゃないか」という意見は当然あります。これは合理的な選択肢で、Optiensもお客様の業務によっては汎用SaaSの利用を提案します。

ただし、自前構築を選んだ理由ははっきりしています。

1. 業務にUIを合わせられる

Optiensの業務フローは「無料診断 → 詳細版AI活用診断(¥5,500税込・MTGなし) → 導入支援 → 保守」という独自の流れです。汎用CRMのステージは「リード → 商談 → 受注」のような汎用設計のため、項目を埋めるたびに業務と画面のズレが小さな摩擦を生みます。

自前構築なら、画面のステージ名・必須項目・デフォルト値・遷移ロジックすべてを業務に合わせられます。画面を見るたびにストレスを感じない——これは長期運用で効いてきます。

2. ライセンス料ゼロ・人数課金ゼロ

汎用CRMの典型は「ユーザー1人あたり月額3,000〜15,000円」です。代表1名の現在は安く済みますが、Phase 2でパート雇用、Phase 3で営業パートナーが増えると、人数に比例して月額が増えていきます

自前構築は、利用人数が増えてもクラウド実費がほぼ変わりません。営業パートナーやパートスタッフに「URL + 認証で必要な範囲だけ共有」という運用が、コスト懸念なく可能です。

3. データが自社所有

これが意外と効きます。Supabaseに格納されたデータは、SQL一発でいつでも取り出せます。CSVエクスポートに依存しません。AI要約のロジックを変えたいときも、ベンダーの仕様変更を待つ必要がありません。

「いつかこのSaaSを乗り換えたいけど、データ移行が怖くてやめられない」という事態が原理的に起きません。

4. 改善サイクルが速い

これが最大の利点だと感じています。後述します。


改善サイクル:週次振り返り → ロジック更新

自社CRMでは、週に1回、運用上の摩擦を振り返り、その場で画面・ロジックを直します。直近4週間で実際に行った改善の例を挙げます。

気づいた摩擦対応
1週目朝のブリーフィングに「滞留案件」が多すぎて見飽きる滞留判定を「7日」から「14日」に変更、優先度ロジック調整
2週目商談メモのAI要約が長いプロンプトを「3行以内・敬体禁止」に変更
3週目スマホで開いたとき、優先案件のCTAが押しにくいスマホ専用レイアウトのボタンサイズ拡大
4週目フォーム入力からCRM登録までに手作業があったEdge Functionで自動連携、手作業をゼロに

これらの改善は、気づいたその週のうちに反映できます。汎用SaaSなら「ベンダーに要望を出す → 採用されるかわからない → 採用されても数ヶ月後」となる項目が、自前構築なら数時間で完結します。

「自分で使うから気づく → 気づいたから直せる → 直したから次週もっと使いやすくなる」——このループが回り続けるのが、自前構築の最大の価値です。


お客様への提案で活きる知見

社内CRMを運用しているからこそ、お客様への提案で具体的に活きる知見が蓄積されます。

1. 「最初から完璧なシステム」を提案しない

自社運用の経験から、最初から完璧な業務システムは作れないことがわかっています。最初は最低限のリード管理だけで運用を始め、運用しながら「次にどこが詰まるか」を観察し、詰まったところから順に改善する——この進め方しか、現実的に成果は出ません。

お客様への提案でも、「フェーズ1で必要最小限の機能を構築 → 1〜2ヶ月運用 → 詰まった箇所から拡張」という段階的な進め方を必ず提示します。

2. AI要約・自動化の「程よい粒度」がわかる

AI要約は、長すぎても短すぎても使われません。Optiens社内では「3行以内・体言止め可・固有名詞は省略しない」という現在の粒度に落ち着くまで、4回プロンプトを書き換えました。

この経験は、お客様の業務でAI要約を設計するときに直接活きます。最初から「3行以内」と決め打ちで提案できるため、お客様側のチューニング工数が大きく削減されます。

3. 「触らないと改善できない」ことを実感している

お客様にも、運用後は「気づいたことを月次で共有する場」を必ず設計します。これは社内CRMの週次振り返りと同じ発想です。運用者の気づき こそが、システムを業務にフィットさせる唯一の燃料だと知っているからです。

4. 月額固定ではなく「成果に応じた拡張」を提案できる

自社で「月額ライセンス料ゼロ運用」を続けているため、お客様にも自信を持って同じ構成を提案できます。「人数が増えても月額が変わらない」「機能を増やしたい時だけ追加投資」という、業務量と投資が直結したコスト構造を、実例として示せます。


「自分で使っていない仕組みは提案しない」

Optiensには、提案を控えている仕組みがあります。たとえば、複雑なワークフロー自動化ツール、エンタープライズ向けの大規模CRM、社内SNS等。これらはOptiens自身の規模では使う必然性がなく、自社運用の経験がないため、お客様にも責任を持って提案できないからです。

逆に、本記事で紹介したCRM・AI要約・経営ブリーフィング・添付ファイル読み取り等は、毎日Optiens自身が使い、毎週改善しています。だからこそ、お客様への提案でも具体的な運用イメージ・想定される摩擦・改善の進め方まで踏み込んで話せます。


まとめ

CRMや業務システムの選定で最も大切なのは、機能数でも価格でもなく、「提案する側が日常的に使い、改善し続けているか」 だと考えています。

  • Optiens社内CRMはSupabase + Astro + AIエージェント構成で稼働中
  • 月額ライセンス料ゼロ・データは自社所有・人数課金なし
  • 週次の改善サイクルで業務との摩擦を継続的に解消
  • 自社運用の知見をそのままお客様への提案に転用

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