提案資料づくりは、AIに全部読ませることから始めない
提案資料を作るとき、過去の提案書、会社案内、料金表、ヒアリングメモ、事例資料を参考にすることはよくあります。
NotebookLMのような資料参照型AIを使えば、こうした資料をもとに、提案の論点、構成案、確認事項を短時間で整理しやすくなります。Googleの公式ヘルプでも、NotebookLMはPDF、Webサイト、YouTube、音声、Google Docs、Google Slidesなどをソースとして扱い、ソースに基づく回答と引用を返すAIリサーチアシスタントとして説明されています。
ただし、提案資料づくりで本当に大事なのは「AIに何を作らせるか」より前にあります。
AIにどの過去資料を読ませてよいか。
ここを曖昧にしたまま始めると、便利になるほど危なくなります。古い価格、顧客固有の条件、秘密保持のある資料、他社向けの提案内容、担当者の主観メモが混ざると、AIはそれを自然な文章に整えてしまいます。
きれいな提案資料に見えても、根拠が混ざっていれば、あとで直す方が大変です。
NotebookLMが向いているのは「たたき台」まで
NotebookLMは、資料の中身を横断して質問できる点が便利です。
たとえば、営業提案であれば次のような使い方ができます。
- 過去提案に共通する構成を整理する
- 顧客ヒアリングメモから課題候補を抜き出す
- 提案資料に入れるべき確認事項を出す
- 過去の表現から、自社らしい言い回しの傾向をつかむ
- 今回の提案に使ってはいけない古い条件を洗い出す
ここでのポイントは、NotebookLMを「提案資料の完成機」にしないことです。
Googleのヘルプでは、NotebookLMのチャット回答はソースに基づき、引用を通じて回答の確認を助けるものとして説明されています。つまり強みは、根拠のある材料を探しやすくすることです。
最終提案の判断、価格、契約条件、約束表現、相手先事情への配慮は、人間が見る領域です。
過去提案は4種類に分けてから入れる
過去の提案資料をそのままフォルダごと入れるのは避けた方がよいです。
最初に、資料を4種類に分けます。
| 区分 | 例 | AIでの扱い |
|---|---|---|
| 正本 | 最新の会社説明、サービス範囲、料金前提、提供条件 | 今回の回答の基準にする |
| 実例 | うまくいった提案構成、説明順、図解の考え方 | 構成や表現の参考にする |
| 注意 | 古い価格、終了したメニュー、例外対応、個別値引き | 使わない条件として明示する |
| 禁止 | 顧客名入り資料、秘密保持対象、他社の提案、個人情報 | 原則としてAIに入れない |
この区分をせずに「過去提案」という名前でまとめると、AIは正本、参考、古い情報、禁止情報を同じ重みで扱いやすくなります。
AIに入れる前に、人間が次のように決めておきます。
今回の提案で参照してよい資料:
今回の提案では参考にするだけの資料:
今回の提案では使わない資料:
AIには入れない資料:
この4行だけでも、提案資料づくりの事故はかなり減らせます。
「似ている案件」ほど危ない
AIに過去提案を読ませるとき、一番使いたくなるのは似ている案件です。
同じ業種、同じ規模、同じ課題、同じ地域。過去資料を使えば早く書けそうに見えます。
しかし、似ている案件ほど注意が必要です。
過去の提案には、その顧客だけの事情が入っています。予算、社内体制、値引き条件、導入できなかった理由、競合比較、担当者の温度感。これらをそのまま今回の提案に混ぜると、相手に関係のない前提や、出してはいけない条件が入り込むことがあります。
特に危ないのは、次のような資料です。
- 顧客名、担当者名、メール文面が残っている
- 値引きや特別対応が書かれている
- 競合名や比較表が入っている
- 契約前の検討メモが混ざっている
- 現在は使っていない価格やメニューが残っている
- 失注理由やクレーム対応が個別事情のまま書かれている
これらは、AIが読めるかどうかではなく、AIに読ませてよいかで判断します。
ノートブックは「1案件」ではなく「1目的」で分ける
NotebookLMを営業で使うなら、ノートブックの分け方も重要です。
「営業資料全部」では広すぎます。
おすすめは、最初に1つの目的へ絞ることです。
- 初回商談前の企業理解
- ヒアリング項目の整理
- 提案資料の構成案づくり
- 過去提案からの表現ルール抽出
- 提出前レビュー
- 提案後の振り返り
たとえば「提案資料の構成案づくり」なら、入れる資料は、最新のサービス説明、今回のヒアリングメモ、匿名化した過去提案、使ってはいけない表現リストくらいで十分です。
一方で、契約書、見積の個別交渉、他社向けの秘密情報、未公開の社内判断メモまで入れる必要はありません。
AI活用は、資料の量で賢くするより、目的と境界を絞った方が安定します。
質問は「作って」より「分けて」
提案資料をAIで作るとき、いきなり次のように聞くと危うくなります。
この資料をもとに提案書を作ってください。
この聞き方では、AIがどの資料を重視し、どの条件を使わないべきかが曖昧です。
最初は、作らせるより分けさせます。
今回の提案に使ってよい根拠、参考に留める情報、使ってはいけない情報を分けてください。
古い価格、個別条件、顧客固有情報、未確認事項を見つけたら、本文案には入れず、確認リストに分けてください。
提案資料の構成案を出す前に、今回の提案で人間が確認すべき前提を列挙してください。
この順番にすると、AIは「きれいな提案書」を急いで作る相手ではなく、提案前の確認係になります。
提案資料づくりで失敗しやすいのは、文章の粗さではありません。未確認の条件が、自然な文章で紛れ込むことです。
だからこそ、AIにはまず、根拠、参考、禁止、未確認を分けさせます。
共有設定は、資料そのものの共有だと考える
NotebookLMで作ったノートブックを社内共有するときも注意が必要です。
Googleの公式ヘルプでは、NotebookLMの共有でViewerやEditorの権限を付けられる一方、Viewerは共有されたノートブック内のソースやメモに読み取りアクセスできると説明されています。また、チャットビュー用リンクでも、素材へのアクセスがすべてなくなるわけではないとされています。
つまり、共有リンクを送ることは、ただAIチャット画面を渡すことではありません。
中に入れた資料を見られる可能性まで含めて、共有範囲を決める必要があります。
営業提案で使うなら、次の確認をしてから共有します。
このノートブックに入っている資料を、共有相手は見てよいか。
編集権限を渡してよい相手か。
社外共有リンクにしてよい内容か。
チャットだけ見せればよい、という前提で秘密情報を入れていないか。
顧客情報や競合提案を含む資料は、AIに入れる前だけでなく、共有前にも止める場所を作ります。
提出前に見る5つの確認
NotebookLMで提案資料のたたき台を作ったら、提出前に次の5点を見ます。
1. 参照した資料は今回の正本か。
2. 古い価格、終了したサービス、個別値引きが混ざっていないか。
3. 顧客固有情報や秘密保持対象を別案件へ流用していないか。
4. AIが作った構成と、人間が約束できる内容を分けているか。
5. 相手に渡す前に、誰が最終確認するか決まっているか。
この5つを見ないまま、AIが作った資料を「たたき台」として人に渡すと、確認する側がかなり苦しくなります。
特に、提案資料は社外に出るものです。言い方が自然でも、会社として約束したように読める表現が残っていれば止めます。
AIが作った構成案は材料です。
提出物にするのは人間の仕事です。
Optiensの見方
Optiensでは、NotebookLMのような資料参照型AIを、営業資料を自動で完成させる道具ではなく、提案前の確認と整理を助ける道具として見ています。
中小企業では、営業資料、過去提案、見積前メモ、問い合わせ履歴、社内ルールが同じフォルダに混ざりがちです。
AIに渡す前に、正本、実例、注意、禁止を分ける。
1つのノートブックに1つの目的を持たせる。
AIには、完成資料より先に、使ってよい根拠と使ってはいけない情報を分けさせる。
この順番なら、NotebookLMは提案資料づくりの近道になります。逆に、境界線を決めずに過去資料を全部入れると、AIの文章力が高いほど、混ざった前提が見えにくくなります。
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まとめ
NotebookLMは、提案資料づくりの前段で役立ちます。
ただし、過去資料を全部入れるほど良いわけではありません。
提案資料で先に決めるべきなのは、どの資料を正本にするか、どの資料は参考に留めるか、どの資料はAIに入れないかです。
便利なAIほど、入力した資料を自然に使います。
だからこそ、提案資料づくりでは、プロンプトより先にソースの境界線を整えることが重要です。
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