「全然フォーマット守ってくれないんですよね」
ある経営者からの相談でこんな話を聞きました。
「Claude Code を試したんです。営業リストを整形する依頼を出したんですけど、全然フォーマットを守ってくれないし、想定したアウトプットが出てこない。これじゃ業務には使えないなと思って、結局やめてしまった」
この相談、原因の 8 割は Claude Code 側ではなく、依頼の仕方 にあります。多くの方が「これやっといて」という雑な依頼をしてしまうことで、賢いエージェント型 AI でも仕事ができないという状況が起きています。
本稿では、エージェント型 AI に仕事を任せる際の PDCA サイクル設計 を、企業リスト整形の実例で解説します。
※ 本稿は 2026 年 5 月時点の Claude Code 仕様に基づきます。
なぜ「これやっといて」では失敗するのか
エージェント型 AI は、人間で言えば「優秀だが御社の業務を全く知らない、入社初日のスタッフ」と同じです。入社初日のスタッフに「営業リスト整形しといて」と言って、思った通りのものが出てくると期待する経営者はいないはずです。
ところが Claude Code に対しては「やってくれるはず」と期待してしまう。これは AI が「分かってくれる」という幻想によるもので、実際には:
- どのフォーマットに揃えるのか
- どの列を追加するのか
- 「相性が良い」と判断する基準は何か
- 不明データはどう扱うか
これらすべてを 依頼者が頭の中だけで持っている 状態で、AI には伝わっていません。だから出力がズレます。
エージェント型 AI の PDCA サイクル
Phase 1: Plan(最重要)
いきなり「やって」と依頼せず、まず AI に進め方を相談する のが起点です。
(×)「営業リスト整形して」
(◯)「Excel データに対してビフォーシートをアフターシートに整形しながら拡充したい。
どんな流れで進めるか、足りない情報はどう集めるかも含めて、設計してほしい」
ここで AI が「ここはどうしますか?」と質問してきたら、1 つずつ回答していきます。たとえば:
- 「相性判定の対象会社は何ですか?」 → 自社の Web サイトを案内する
- 「不明データはどう扱いますか?」 → 「不明」と入れる
- 「上場/未上場の区別は?」 → 区別しない
この 「フェーズ 0 の前提合意」 を AI と握ることが、その後のすべての作業の精度を決めます。
Phase 2: Do(小さく実行)
合意が取れたら、いきなり全件処理させない。まず 1 件だけ実行 させて結果を見ます。
数十件・数百件まとめて処理させて間違っていた場合、手戻りコストが膨大になります。1 件 → 確認 → 改善 → 数件 → 確認 → 改善 → 全件展開、と段階的に広げるのが鉄則です。
Phase 3: Check(厳密に確認)
人間が 1 件 1 件確認します。確認ポイント:
- 数値は合っているか
- 文章の粒度は適切か
- 判定基準は妥当か
- 各列の書き方は揃っているか
「だいたい合ってる」で次に進むと、後で全件にズレが波及します。最初の 1 件は徹底的に詰めます。
Phase 4: Action(改善 + 記録)
問題があれば改善要望を出します。さらに重要なのは、学んだことを CLAUDE.md に記録 する作業です。
CLAUDE.md は、Claude Code がフォルダを開くたびに最初に読み込むテキストファイル(マークダウン)です。ここに「この業務ではこう進める」「この判定基準で評価する」「過去にこんなミスをしたから注意」と書き残しておけば、次回以降同じことを言わなくて済みます。
詳しくは CLAUDE.md でセッション跨ぎの知識継承を作る方法 で深掘りします。
1 業務 1 フォルダ原則
PDCA を回す際の物理構造として、1 業務につき 1 フォルダ を作ります。
ローカルフォルダ/
├── 営業リスト整形/
│ ├── CLAUDE.md ← この業務のマニュアル
│ ├── ビフォー.xlsx
│ └── アフター.xlsx
├── 月次レポート作成/
│ ├── CLAUDE.md
│ └── ...
└── 顧客メール返信/
├── CLAUDE.md
└── ...
これにより:
- 業務ごとに文脈が混ざらない
CLAUDE.mdにその業務専用のマニュアルを蓄積できる- 別業務の操作が混在しないため、意図しない処理が起きにくい
「設計を AI 自身に手伝わせる」が大事
「Plan のところで使用書を自分で書かないといけないのが大変そう」と思った方、安心してください。Plan の設計自体も AI と一緒にやればよい です。
具体的には:
- 「こういう業務をやりたい。どう進めればよいか考えて」
- AI が「こういう手順はどうですか」と提案してくる
- 不明点を AI から質問してくる
- それに答えるだけで、いつの間にか業務設計が完成している
特に非エンジニア・非 IT の経営者の場合、自分の狭い知見で考えるよりも、AI に「こんな選択肢ありますよ」と引き出させる方が、結果的に良い設計になります。
ステップアップで信頼関係を作る
PDCA サイクルを 1 業務で 1 周回すと、その業務については 2 回目以降ほぼ放置で実行できる 状態になります。CLAUDE.md にマニュアルが書かれているので、新しいセッションでも文脈を引き継げます。
これを 1 業務、また 1 業務と広げていくことで、社内の業務がどんどん自動化されていきます。最初は 1 業務に半日かかるかもしれませんが、3 業務目から劇的に速くなります。
弊社が AI 業務自動化の構築支援を行う際も、最初の 1〜2 業務は徹底的に Plan を握り、PDCA を一緒に回しながら進めます。詳しくは 導入支援 のご案内をご参照ください。