CLAUDE.md でセッション跨ぎの知識継承を作る ── AI エージェントを「学習する社員」にする


CLAUDE.md でセッション跨ぎの知識継承を作る ── AI エージェントを「学習する社員」にする

「同じことを何度も説明している気がする」

Claude Code を使い始めた経営者・現場担当者から、この声をよく聞きます。

「便利なんだけど、新しいセッションを開くたびに『ウチの業務の決まりは…』『この用語はこういう意味で…』『この処理ではこのフォーマットを守って…』と毎回説明している。これじゃ作業時間が逆に増えている気がする」

これを解消するのが CLAUDE.md というファイルです。本稿では、このファイルの役割と正しい育て方を整理します。

※ 本稿は 2026 年 5 月時点の Claude Code 仕様に基づきます。


CLAUDE.md とは何か

CLAUDE.md は、Claude Code がフォルダを開くたびに 自動的に読み込むテキストファイル(マークダウン形式)です。

他の AI ツールに例えると、ChatGPT の GPTs や Gemini の Gem における「初期プロンプト・カスタム指示」相当です。違いは、CLAUDE.md はフォルダ単位で配置できるため、業務ごとに別の指示を持たせられる点です。

配置パターン

CLAUDE.md は 2 階層で配置できます:

  1. グローバル%USERPROFILE%/.claude/CLAUDE.md(全セッションで読まれる)
  2. フォルダごと{業務フォルダ}/CLAUDE.md(そのフォルダ内のセッションでだけ読まれる)

たとえば、グローバルには「Python パッケージは UV 経由で入れる」「破壊的操作は確認する」のような 全業務共通のルール を書きます。フォルダごとには「営業リスト整形業務ではこのフォーマット」「月次レポート業務ではこのテンプレ」のような 業務固有の指示 を書きます。


なぜセッション跨ぎの記憶継承が必要なのか

理由 1: セッションは閉じると消える

Claude Code はチャットセッション内では文脈を覚えていますが、セッションを閉じると基本的にゼロからスタートします。「昨日話したあの件」と振られても分かりません。

理由 2: 容量オーバーで別セッションに移ることがある

長時間使っていると、コンテキスト容量がオーバーして「新しいセッションに移ってください」と言われます。このとき、CLAUDE.md がないと業務の前提が全部消え、再度最初から説明し直しになります。

理由 3: 担当者が変わる時に引き継ぎがゼロになる

社員 A が育てた依頼パターンを、社員 B が引き継ぐとき、CLAUDE.md がなければ全部口頭または文書で再共有が必要です。CLAUDE.md に蓄積されていれば、社員 B はフォルダを開くだけで A と同じ条件で作業できます。


CLAUDE.md の育て方(4 段階)

段階 1: 最初の作業時に基本ルールを書く

業務を初めて Claude Code で実行するとき、PDCA サイクルの最後に「今回の作業内容と気をつける点を CLAUDE.md にまとめて保存して」と依頼します。

Claude Code が自動でファイルを生成し、業務マニュアルとして保存してくれます。詳しくは Claude Code に「これやっといて」が失敗する理由 で PDCA サイクルを解説しています。

段階 2: 2 回目以降の実行で改善点を追加

2 回目以降の作業で「ここはこうした方がよかった」「この場合はこう判定すべき」と気づきがあれば、その都度 CLAUDE.md に追記してもらいます。

今回の実行を踏まえて、効率的にやる方法があれば CLAUDE.md に追記しておいて

これだけで、Claude Code が「無駄な遠回りをしたパターン」を学び、次回以降は最短ルートで実行するようになります。

段階 3: 複雑になったら別ファイルに切り出す

CLAUDE.md毎セッション必ず最初に読み込まれる ため、内容が肥大化するとトークン消費が増え、応答が遅くなります。

特定の業務でしか使わない詳細情報(例:判定軸の定義、サービスごとの API 仕様)は、別ファイルに切り出して CLAUDE.md には参照だけ書きます:

判定基準の詳細は `docs/judgment-criteria.md` を参照(必要時のみ)

これにより、毎回読み込まれるトークン量を抑えつつ、必要な情報には到達できる構造になります。

段階 4: 安定したら Agent Skills に切り出す

特定の業務パターンが安定し、複数のフォルダで再利用したくなったら、Agent Skills という仕組みに切り出すこともできます(Anthropic が 2025 年 10 月に発表、同年 12 月にオープン標準化された機能)。ただし、Skills 化はアップデートがやや面倒なので、「フォルダ内 CLAUDE.md で十分なら無理に切り出さない」 が実務的に楽です。

Agent Skills の詳細は Anthropic 公式アナウンス を参照してください。


CLAUDE.md に書くべきこと・書かないべきこと

書くべきこと

  • 業務の目的と概要:何のための作業か
  • 入出力フォーマット:どんなデータを受け取り、どんな形式で返すか
  • 判定基準:「これは A、それは B」の分け方
  • 過去の失敗パターン:「以前これでミスしたから注意」
  • 使う外部ツール・MCP:どのコネクターを呼ぶか
  • 権限・許可レベル:何は確認なし、何は確認必要

書かないべきこと

  • 機密情報・パスワードCLAUDE.md は Git に含めるのが普通なので、.env 等に分離する
  • 頻繁に変わる数値:会議数・KPI の現在値などはデータベースに置く
  • 長すぎる詳細:参照ファイルに切り出してリンクを貼る

弊社での運用例

弊社が業務自動化システムを構築する際、納品物には必ず:

  1. 業務フォルダ + フォルダ内 CLAUDE.md
  2. 詳細仕様の参照ファイル群
  3. CLAUDE.md の育て方ガイド(運用開始後の追記方法)

を含めています。納品時点では「最初の 1 周」をこちらで仕込み、運用しながら社内で育てていただく形です。

これは AI システムは 8 割が「育成」── 納品時点で完成しない設計 でも触れた「納品 = 完成ではない」設計の中核ピースです。


グローバル CLAUDE.md の推奨設定

最低限グローバルに書いておくべき項目:

## Python 環境
- パッケージ管理・実行は UV を優先する
- グローバルの pip インストールは行わない

## 破壊的操作
- ファイル削除・データベース削除の前に必ず確認
- Git コミット前にステータス確認

## API キー管理
- API キーは .env ファイルに保存
- .env は .gitignore に追加
- チャットへの直接入力禁止

これだけ書いておくだけで、環境汚染・データ消失・キー漏洩のリスクが大きく下がります。詳しくは AI 駆動開発の「環境汚染」を防ぐ ── UV と Bypass モードによる安全設計 で別角度から解説しています。


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