AIで商品LPを作る流れが、かなり変わってきました。
以前は、文章をAIで作り、画像は別のツールで用意し、Web担当者がページに組み込む、という分業が多かったと思います。いまはAIエージェントが外部ツールとつながり、画像や動画の生成、素材の保存、コード実装、スクロール演出まで、ひとつの流れで扱えるようになっています。
Model Context Protocol、いわゆるMCPは、AIアプリケーションが外部システム、データソース、ツール、ワークフローへ接続するための標準として説明されています。Claude Codeの公式ドキュメントでも、MCP経由で外部ツールやデータソースに接続し、課題管理、監視、データベース、デザイン、Gmailなどを扱う例が示されています。
これは制作側には便利です。
ただし、商品LPでは便利さと同じくらい、公開前の責任分界が大事になります。
AIが素材を作り、AIがコードに組み込み、AIが見栄えまで整えた場合、完成後に次の問いが残ります。
この素材は、公開に使ってよいものか
この商品表現は、実物とずれていないか
この演出は、誤解を生まないか
誰が公開してよいと判断したのか
公開後に修正が必要になったら、どこを直せばよいのか
この記事では、AI生成素材を使って商品LPを作る前に、中小企業が決めておきたい責任分界を整理します。
作れることと公開できることを分ける
AIエージェントと画像・動画生成ツールを組み合わせると、商品写真風の画像、短い紹介動画、背景素材、SNS向けの派生素材、Webページのレイアウト案まで一気に作りやすくなります。
Higgsfieldの公式ページでも、MCPを使ってAIエージェントから画像生成、動画生成、キャラクター作成、制作履歴の参照を行えると説明されています。CLIページでは、商品ページからローンチ動画を作る例や、静止画の商品写真を映画的な動きにする例も紹介されています。
こうした流れを見ると、「AIに商品LPを丸ごと任せられる」と感じるかもしれません。
でも、業務では少し違います。
AIに任せやすくなったのは、制作の一部です。公開判断まで自動で任せてよいわけではありません。
たとえば、同じ商品LPでも、次の2つはまったく別の扱いになります。
実物の商品写真を使い、背景や構図だけを整えたLP
架空の商品利用シーンをAIで作り、実在する商品の紹介に使うLP
前者は、商品の形、色、素材感、サイズ、付属品が実物とずれていないかを確認します。後者は、イメージ表現であること、実在しない利用シーンを実績のように見せていないこと、誇張しすぎていないことを確認します。
「作れるか」ではなく、「どの情報として見せるか」を先に分ける必要があります。
素材生成とWeb実装を同じタスクにしない
AIエージェントに頼むとき、一番危ないのは、次のようにまとめて依頼することです。
商品LPを作ってください。
素材も必要なら生成してください。
見栄えよく実装して公開できる状態にしてください。
気持ちは分かります。速く進みます。
ただ、この頼み方だと、素材生成、素材承認、Web実装、公開判断が混ざります。
商品LPでは、最低でも次の4つに分けた方が安全です。
1. 参照素材を整理する
2. AIで生成してよい素材を決める
3. 生成素材を人間が承認する
4. 承認済み素材だけをWeb実装へ渡す
特に大事なのは、3と4の間です。
生成された画像や動画がきれいでも、そのままLPに入れない。いったん「承認前素材」として止める。商品担当者、広報担当者、代表などが確認し、公開してよい素材だけを「承認済み素材」としてWeb実装へ渡す。
この一手間がないと、後から「その画像は誰が確認したのか」「実物と色が違うのでは」「存在しない利用シーンに見えるのでは」という話になります。
商品LPで先に決める3つの境界
AIで商品LPを作る前に、難しい設計書は要りません。
まずは3つの境界を決めます。
1. 実物情報とイメージ表現の境界
商品LPでは、実物情報とイメージ表現を分けます。
実物情報:
- 商品名
- 価格
- サイズ
- 仕様
- 素材
- 実際の写真
- 実際の導入事例
イメージ表現:
- 架空の使用シーン
- 雰囲気を伝える背景
- 抽象的な3D演出
- AIで作った人物や場所
- 商品周辺の演出素材
AIで作った素材が、実物情報のように見えるほど注意が必要です。
実在しない店舗、実在しない利用者、実際にはない機能、実物より高級に見える質感。こうした表現は、LPの印象を強くする一方で、誤解も生みやすくなります。
2. 生成素材と承認済み素材の境界
生成素材は、まだ公開素材ではありません。
フォルダや台帳では、次のように分けます。
reference_readonly: AIに読ませるだけの参照素材
generation_inputs: AI生成に使ってよい素材
ai_outputs_review: 生成されたが未承認の素材
publish_ready: 公開に使ってよい承認済み素材
do_not_use: 使わない素材、権利や品質に不安がある素材
フォルダ名は何でも構いません。
大事なのは、AIが作った素材をいきなり公開フォルダへ入れないことです。
素材の品質だけではなく、権利、人物、商品差異、ブランドトーン、表示方針を確認してから公開用に移します。
3. 制作権限と公開権限の境界
AIエージェントにWeb実装まで任せる場合、制作権限と公開権限を分けます。
制作権限:
- 素材を生成する
- ページ案を作る
- コードを編集する
- ローカルで表示確認する
公開権限:
- 本番サイトへ反映する
- 広告配信に使う
- SNSへ投稿する
- 顧客向けメールに載せる
制作権限を渡すことと、公開権限を渡すことは別です。
中小企業では担当者が兼任になりやすいため、ここが混ざります。だからこそ、AIに作らせる前に「本番公開は人間が判断する」「承認済み素材だけ使う」「公開後の修正窓口を決める」といったルールを置いておく方が安全です。
動く演出ほど、承認ポイントを前に置く
商品LPでは、スクロールに合わせて画像や動画が動く表現が増えています。
GSAPのScrollTriggerは、スクロール位置に合わせてアニメーションを実行したり、スクロールバーに直接リンクさせたりできると説明されています。Lenisは、ネイティブスクロールを滑らかで制御しやすい体験にする軽量なオープンソースライブラリとして紹介されています。Three.jsは、Web上で3D表現を扱うための代表的なライブラリです。
こうした技術を使うと、LPの印象は強くなります。
ただし、演出が強いほど、確認すべきことも増えます。
スクロール時に商品が実物と違う形に見えないか
動画の途中で色や質感が変わって見えないか
背景や3D演出が、実在の機能や効果に見えないか
スマホで見た時に文字やCTAが読めるか
動きが強すぎて、商品説明より演出が勝っていないか
特に、動画をスクロールに連動させるLPでは、止めて見る場面と動いて見る場面で印象が変わります。
静止画だけで承認せず、実際にスクロールしながら確認する必要があります。
MCP連携は便利だが、権限を広げすぎない
MCP連携は、AIに外部ツールを使わせる仕組みとして便利です。
ただし、便利だからこそ、最初は権限を小さくします。
Claude Codeの公式ドキュメントでは、MCPサーバーを信頼できるか確認すること、外部コンテンツを取得するサーバーにはプロンプトインジェクションリスクがあることも示されています。
商品LP制作で最初に決めたいのは、次の5つです。
どの外部ツールにつなぐか
どの素材フォルダを読ませるか
どこへ生成結果を保存させるか
本番公開フォルダへ書き込ませるか
生成履歴と承認履歴をどこに残すか
最初から本番サイト、顧客素材、未公開写真、価格表、社内メモまで全部読める状態にしない方がよいです。
小さな検証フォルダ、仮の商品素材、公開しても問題のない説明文から始めます。AIがうまく動くことを確認してから、扱う範囲を広げます。
公開前チェックリスト
AI生成素材を使った商品LPを公開する前に、最低限この1枚を埋めます。
LP名:
目的:
公開先:
対象商品・サービス:
実物情報として見せる内容:
イメージ表現として使う内容:
AIで生成した素材:
AIで編集した素材:
AIに渡した参照素材:
生成素材の確認者:
商品差異の確認者:
ブランド表現の確認者:
公開判断者:
MCPや外部ツールの接続先:
読み取りを許可したフォルダ:
保存を許可したフォルダ:
本番公開フォルダへの書き込み可否:
スマホ表示確認:
スクロール演出確認:
CTA確認:
公開後の修正担当:
公開判断: 公開 / 修正 / 見送り
この表は、制作を遅くするためのものではありません。
後から説明できるようにするためのものです。
AIで作ったLPほど、完成までの道筋が見えにくくなります。だからこそ、公開前に「何を素材として使い、何をAIで作り、誰が確認したか」を残しておく意味があります。
AI商品LPに向く業務、慎重にしたい業務
AI生成素材を使ったLPは、次のような用途から始めやすいです。
新商品のラフLP案
社内説明用のデモページ
展示会前の仮コンセプトページ
広告出稿前のクリエイティブ比較
既存ページの構成改善案
採用ページのワイヤーフレーム案
一方で、最初から慎重にしたい用途もあります。
医療、法律、金融に関わる説明
実在人物に似た人物を使う採用LP
商品性能を強く印象づける広告LP
実績や導入事例に見える架空表現
価格、納期、保証を含む販売ページ
顧客データや未公開資料を使う制作
AIで見栄えがよくなるほど、信頼されやすくなります。
だからこそ、誤解された時の影響が大きいページほど、下書き、社内確認、限定公開、テスト環境から始める方が安全です。
Optiensの見方
Optiensでは、AIによる商品LP制作を「きれいなページを早く作る方法」だけでは見ません。
中小企業にとって大事なのは、公開後に説明できる制作フローを作ることです。
どの素材を使ったか。どこまでAIで生成したか。実物情報とイメージ表現を分けたか。外部ツールにどの権限を渡したか。誰が公開判断をしたか。
この地味な確認がある会社ほど、AIを制作の味方にしやすくなります。
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